ケーブルのノイズ耐性・柔軟性を左右するシールド設計の「密度」と「施工」

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編組密度・周波数特性・柔軟性の違いを、失敗しないために整理する

製造現場や装置設計で「ノイズが乗る」「通信が不安定」「サーボが時々エラー」「エンコーダの位置がズレる」――。こうした症状の裏に、シールド(編組)設計の密度”と施工が関わっているケースは少なくありません。

本記事では、編組密度(=編組の詰まり具合)が、

  • 周波数特性(どの帯域のノイズに強いか)
  • 柔軟性(曲げやすさ・可動寿命)
    にどう効いてくるのかを、できるだけ実務に落として解説します。

そもそも「編組密度」とは?(= 被覆率・カバレッジ)

編組シールドは、導体(芯線)の外側に細い金属線を網状に編み込む構造です。現場では「編組密度」「被覆率(カバレッジ)」「編組の目の細かさ」などの言い方をします。

  • 編組密度が高い:網目が細かく、金属がよく覆う(隙間が少ない)
  • 編組密度が低い:網目が粗く、隙間が多い

ポイントは、密度は“見た目”だけでなく、高周波ノイズの侵入・漏洩のしやすさに直結することです。

周波数特性 : なぜ「高密度編組ほど高周波に効く」のか

ノイズは周波数帯で性格が変わります。ざっくり言うと、

  • 高周波(MHz 帯以上): スイッチング由来のノイズ(インバータ、サーボ、通信、データ系)
  • 低周波(電源周り・誘導ノイズ): 磁界の影響も絡み、対策が別アプローチになることが多い

編組密度が効きやすい領域

編組は「金属の網」です。網目(隙間)が小さいほど、高周波の漏れ道が減るため、一般に高密度編組は高周波対策で有利です。HELUKABEL の 同軸ケーブル解説 でも、シールド性能の要件例として「90% 以上の編組密度」が挙げられています。

指標”として知っておくと便利:カップリング抵抗(周波数依存)

シールド効果を評価する指標の一つに「カップリング抵抗」があり、周波数依存で評価されます(値が小さいほど良好なシールド)。(「相互容量」「カップリング抵抗」とは?ノイズに強い配線の選び方)
※データシートにこの手の指標がある場合、どの周波数での値かを見ると、用途(ノイズ帯域)と合わせ込みやすくなります。

柔軟性 : 編組密度を上げると“曲げにくくなる”理由

高密度編組は遮蔽面で有利ですが、設計・保全の観点ではトレードオフもあります。

高密度編組が硬く感じやすい要因(実務的な理解)

  • 金属量が増え、シールド層が“鎧”に近づく
  • 曲げ時に編組が擦れ合う・締まることで、曲げ抵抗が上がる
  • 可動用途では、屈曲で編組が変形しやすく、条件が悪いと性能が落ちることがある

さらに重要なのが曲げ半径です。曲げがきつすぎると、シールド編組が開いて密度が下がり、EMC 性能が悪化し得る――という注意点があります。

失敗例で理解する : ノイズと“編組密度不足”の関係

たとえばエンコーダ/フィードバック系では、ノイズ混入で位置ズレが起きる原因として「編組密度の不足」や「不適切な接地」が挙げられ、対策として高密度編組+360° クランプでの両端接地が示されています。 (エンコーダ/フィードバックケーブル徹底解説)
つまり、ケーブル構造だけでなく、接地方法(施工)がセットで効いてくる、ということです。

“周波数特性 × 柔軟性”で選ぶ : 用途別の現場ガイド

ここからは、カタログ選定のときに迷いが減る「考え方」を整理します。

(1) インバータ/VFD/サーボ周り(高周波ノイズが強い)

  • 目安 : 高周波ノイズ対策が主目的
  • 施策 : 二重シールド(編組+フォイル等)や、360° クランプ接地で実装時の EMC を安定化させる考え方があります。(VFD(インバータ)とは?VFD配線に最適なケーブルの選び方ガイド)
  • 実務のコツ : ケーブル単体スペックだけでなく、盤内で「360°で接地できる構造(クランプ・グランド)」まで含めて設計する

(2) ドラッグチェーン/ロボットなど可動部(柔軟性・寿命が最優先になりやすい)

  • 目安 : 遮蔽も必要だが、まず壊れないこと”
  • 注意 : 曲げ半径が厳しいと編組が開き、密度低下→EMC 悪化のリスク
  • 実務のコツ : 可動用途は「密度を上げれば安心」ではなく、可動実績のある構造(細線撚り等)+適正な曲げ半径管理まで含めて最適化する

(3) 同軸/高周波伝送(特性インピーダンスや減衰が重要)

  • 目安 : 高周波での減衰・インピーダンス安定性が支配的
  • 参考 : RG 同軸の要件例として、シールド性能「90% 以上の編組密度」、柔軟性(最小曲げ半径の例)などが整理されています。

最後に : 編組密度“だけ”を見ない(施工と付属品が結果を決める)

編組密度は重要ですが、最終的な効きは「現場の作り込み」で大きく変わります。
たとえばケーブルグランドは、防塵防水だけでなく、シールド付きケーブルの EMC 性能確保にも関わる部材として解説されています。(ケーブルグランドの選び方)

チェックリスト(最低限)

  • ノイズの周波数帯(インバータ由来?通信由来?)を想定できているか
  • 可動か固定か(曲げ半径・ねじり・繰返し回数)を前提にしているか
  • 360° 接地ができる構造・施工になっているか
  • グランドやクランプなど“付属品込み”で整合しているか

HELUKABEL は設計要求に合わせた供給体制を整えています。
用途・ノイズ環境・可動条件を共有いただければ、目的に合う構造(密度/二重シールド/外被/施工方法)を一緒に詰めることができます。

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