船舶で使われるケーブルの種類と選び方

image of JP article - cable

船舶で使われるケーブルの種類と特徴

船の電気配線は、工場設備以上に「環境ストレス」と「安全要件」が厳しくなりがちです。潮風(塩害)・海水飛沫・振動・油分・狭い配線スペースに加え、万一の火災時に“避難と復旧を妨げない”材料設計が重要になります。

ここでは、船内でよく登場するケーブルのタイプ別の役割と、選定で失敗しないためのチェックポイントを整理し、最後に HELUKABEL の関連シリーズ例をご紹介します。

船内で使われるケーブル : 代表的なタイプ

1. 電力・配電(Power

発電機・配電盤から、動力(ポンプ、ファン、補機)や照明へ電気を届ける“幹線”です。
重視点 : 許容電流/電圧、耐熱、耐油、敷設条件(固定・可動)、難燃、低発煙・ハロゲンフリーなど。

2. 制御・計装(Control / Instrumentation

バルブ制御、センサー信号、機器間の I/O など、船の運用を支える“神経系”です。
重視点 : ノイズ(EMC)対策、シールド有無、可とう性、難燃・低発煙。

3. 通信・データ(Data / Network

航海・監視・保守のためのネットワーク配線(イーサネット等)。
重視点 : シールド構造(SF/UTP、S/FTP等)やノイズ環境の適合、可動部対応。

4. 可動・巻取り・屈曲がある用途(Reeling / Moving

クレーン、ウインチ、可動架台、点検用可動部など、繰り返し曲げや巻取りが発生する場所。
重視点 : 曲げ寿命、耐摩耗、耐候、耐油、芯線構造。

5. 高温エリア(Engine room / Heat zone

機関室周辺や発熱機器近傍では、温度ストレスが支配的になります。
重視点 : 耐熱材料(シリコーン、フッ素樹脂、ニッケル系など)、温度レンジ、難燃。

船舶ケーブル選定で“外せない”要求特性

火災安全 : 難燃・低発煙・ハロゲンフリー

船内は避難経路が限られるため、燃焼時の煙・腐食性ガスの抑制が重視されます。 HELUKABEL Japan の解説でも、IEC 60332 系の難燃試験や、LSZH(低煙ハロゲンフリー)の考え方を整理しています。

さらに“煙の量”だけでなく、燃焼ガス毒性まで含めて評価したいケースでは、NF X 70-100 などの参照試験が役に立ちます。

過酷環境 : 塩害・油・薬品・紫外線・振動

屋外甲板は耐候・耐 UV、機関室は耐油・耐熱、さらに振動による被覆割れや端末部の緩みも現場課題になりやすいポイントです。端末には、用途に合うグランド選定(防水・防塵・引張保護)もセットで考えるのが安全です。

HELUKABEL の関連製品シリーズ例(船舶用途に“当てはめやすい”ラインアップ)

※ここでは「船内でよく出る要求特性」に対して、選定の起点になりやすいシリーズを紹介します(最終選定は電圧・芯数・敷設条件・要求規格で絞り込みます)。

1) 水辺・屋外にも強い電源ケーブル候補 : HELUPOWER® H07RN-F LS0H

ゴムシース系の柔軟性を持ちながら、ハロゲンフリー・低発煙(LS0H)を特徴とするタイプが紹介されています。水辺設備の用途例や温度レンジ等も説明されています。

2) 低発煙・毒性評価まで視野に : MEGAFLEX® 500 / MEGAFLEX® 500-C

NF X 70-100(燃焼ガス毒性)への対応がデータシートに明記されている例として、MEGAFLEX® 500(およびシールド付の500-C)が挙げられています。船舶分野にも適する旨の記載があります。

3) 制御・接続の定番レンジ : JZ-500 / OZ-500

制御・接続用 PVC ケーブルの代表例として、IEC 60332-1-2 等の難燃適合が紹介されています。

4) 駆動・モータ周りの配線整理に : TOPSERV® Hybrid

サーボ用途向け“ワンケーブル”の考え方や、難燃(IEC 60332系)への言及が HELUKABEL Japan の解説記事内にあります。船内のウインチ・クレーン・補機など、駆動系で配線点数を減らしたい場面の検討起点にできます。

5) 機関室・高温エリアに : HELUTHERM® / シリコーン系(SiF, SiHF-C-Si

耐熱ケーブルのガイド記事で、航空・船舶など高温設備の配線用途として、SiF や SiHF-C-Si、HELUTHERM® シリーズが例示されています。
また、事例記事では高温エリアに HELUTHERM 400(ニッケルケーブル)を使う記述もあります。

6) 重要信号を“火災時も維持”したいなら : HELUDATA® EN-50288-7 FIRE RES OSA 500

バンドル火災試験解説ページ内(バンドル火災試験 - EN 60332-3-24 の概要)で、回路機能維持(IEC 60331-21)等の特徴を持つ例として紹介されています。

7) 端末品質まで含めて一式で : HELUTOP(ケーブルグランド)

ケーブルグランドなど付属品として HELUTOP 製品ラインが推奨されます。

失敗しないための“選定チェックリスト”(現場ヒアリング用)

  • 敷設場所 : 屋外甲板/機関室/居住区画/制御室/可動部
  • 必須特性 : 耐油・耐候・耐UV・耐熱・耐摩耗・耐薬品
  • 火災安全 : 難燃(IEC 60332系)、低発煙、ハロゲンフリー(LSZH/LS0H)、必要なら毒性評価
  • EMC : シールド要否(計装・通信・インバータ周り)
  • 端末 : 防水・防塵、引張保護、グランド適合(サイズ・材質)
  • 承認 : 船級・プロジェクト仕様書の要求(DNV/ABS等)

日本のお客様へ : HELUKABEL Japan での進め方

HELUKABEL はドイツ Hemmingn 本社から日本語での情報提供・問い合わせをしております。
また、 製品検索(プロダクトファインダー) では、日本語検索やフィルタで候補を絞り込める旨が紹介されています。

船舶用途の仕様(電圧・芯数・敷設・必要規格)が分かれば、該当シリーズから最短で絞り込みが可能です。ご相談は下記よりどうぞ。

バック