ケーブルグランドの選び方ガイド
材質・形状・IP 等級(IP66/67/68/69K)の違いを解説
ケーブルグランドとは?
ケーブルグランドは、ケーブルを盤や機器ハウジングへ安全かつ確実に固定し、防塵・防水・引張保護を行うための専用パーツです。適切なケーブルグランドを選定することで、
- 異物・水分の侵入を防ぎ、装置のトラブルを低減
- ケーブルの引っ張りやねじれによる断線・接触不良を防止
- シールド付ケーブルの場合は、EMC(ノイズ対策)性能を確保
といったメリットが得られます。ケーブル・電線・ケーブルアクセサリの国際的メーカーである HELUKABEL グループでは、ケーブル本体だけでなく、高品質なケーブルグランドも一体で提供しており、世界 40 か国以上で採用されています。
材質による違いと選び方
1. プラスチック(ポリアミド)製ケーブルグランド
代表例 : HELUTOP® HT など
特徴
- 主に ポリアミド(PA6 など) を使用
- 軽量で扱いやすく、腐食に強い
- コストパフォーマンスに優れる
- 振動対策を考慮した構造の製品もあり、産業用途にも対応
おすすめ用途
- 一般的な制御盤・機械装置のケーブル引き込み
- 腐食の恐れがあるが、極端な衝撃が少ない環境
プラスチック筐体機器、分電盤、制御ボックスなど
2. 真鍮製ケーブルグランド(ニッケルメッキ)
代表例 : HELUTOP® MS-EP4(EMC 対応)、その他 HELUTOP® MS 系列
特徴
- 本体は 真鍮(ブラス)、表面は多くがニッケルメッキ
- プラスチックに比べて機械的強度が高い
- ねじ部の精度が高く、高いシール性を確保しやすい
- EMC 対応品では、内部構造でシールド編組と 360° 接触し、
ケーブルシールドを確実に接地できる
おすすめ用途
- 振動・衝撃の多い機械・プラントエンジニアリング
- シールド付制御ケーブルやデータケーブルの引き込み(EMC 対策が必須の装置)
- 金属ハウジングの制御盤、モータ接続箱など
3. ステンレス製ケーブルグランド
代表例 : HELUTOP® HT-E など
特徴
- 本体は ステンレススチール
- 高い耐食性・耐薬品性を備え、錆びにくい
- 繰り返しの高圧・高温洗浄にも耐える IP68/IP69K クラスの製品が主流
おすすめ用途
- 食品・飲料工場など、頻繁な高圧洗浄が行われる設備
- 化学プラント、製薬設備など、腐食性のある環境
- オフショア、屋外の厳しい環境
4. 特殊材質(PVDF など)
代表例 : HSK-PVDF(ポリフッ化ビニリデン製ケーブルグランド)
特徴
- PVDF などの特殊フッ素樹脂は、
高温・強い紫外線・薬品に対して優れた耐性を持つ - 太陽光発電システムなど、屋外で長年使用される環境に最適
おすすめ用途
- 太陽光発電システムのストリングボックスや DC 接続部
- 化学薬品を扱う設備の屋外ボックス
- 高温度環境でのケーブル引き込み
形状・構造による違い
同じ材質でも、ケーブルグランドにはさまざまな形状・構造があります。
HELUKABEL の代表的な種類を整理します。
1. 標準ストレートタイプ(丸ケーブル用)
- 最も一般的な形状
- 丸ケーブルをまっすぐ引き込む
- 多くのシリーズで、クランプ範囲(ケーブル外径)が細かく設定されており、ケーブル外径に合わせてサイズを選定
2. フラットケーブル用グランド
代表例 : STS-F、STK-F など(フラットケーブル専用)
- フラットケーブルの形状に合わせた口金で、安定したシールが可能
- コンベヤ、ドラッグチェーン、エレベータなど、フラットケーブルを多用する設備に有効
3. EMC 対応ケーブルグランド
代表例 : HELUTOP® MS-EP/MS-EP4、HSK-MS-E-D など
- 内部にバネ構造やクランプリングを持ち、シールド編組と 360° 接触
- シールドから筐体までの低インピーダンスな接続を実現し、EMC 性能を向上
- インバータ、サーボドライブ、産業用イーサネットなどノイズに敏感な機器に必須
4. ねじなし・スナップインタイプ(スレッドレス)
代表例 : HELUTOP Easy(スレッドレスケーブルグランド)
- パネルに開けた穴へスナップインでワンタッチ取り付け
- 薄板筐体や、ねじ切りが難しい樹脂ケースに最適
- 工具不要で作業時間を短縮し、組立工数削減に貢献
5. ロングスレッド/ショートスレッド
- 厚板パネルや二重構造のハウジングでは、ねじ部が長いタイプ(ロングスレッド)が有利
- 一方で、スペース制約の厳しい小型ボックスではショートスレッド品が有効
例 : HELUTOP MS-EP4 M63x1,5(真鍮製、IP68、ねじ長さ 14 mm など)
IP 等級(IP66/67/68/69K)の違い
IP コードの基本
IP コードは、IEC 60529 によって定義された「侵入に対する保護等級」を示す規格で、「IP67」のように 2 桁の数字で、防塵(1 桁目)と防水(2 桁目)のレベルを表します。
- 「6」: 粉じんの完全な侵入を防ぐ(ダストタイト)
- 「7」「8」「9K」: 水の侵入に対する保護レベル
HELUKABEL のケーブルグランドは、多くのシリーズで IP68/IP69K を満たしており、過酷な環境でも高い防水・防塵性能を発揮します。
< IP66 >
- 防塵 : 6 … 粉じんの侵入を完全に防止
- 防水 : 6 … あらゆる方向からの強い噴流水に耐える
→ 屋外設備や、強い水しぶきがかかる場所で有効(例 : 屋外制御箱、重機周辺)。
< IP67 >
- 防塵 : 6 … 粉じんの侵入を完全に防止
- 防水 : 7 … 一時的な水没(通常 1m・30 分程度)に耐える
→ 海沿い・屋外設備、清掃時に一時的な冠水が想定される装置に適しています。
< IP68 >
- 防塵 : 6 … 粉じんの侵入を完全に防止
- 防水 : 8 … メーカーとユーザー間で合意された条件で、
継続的な水没に耐える(水深・時間は仕様で定義)
→ 地中埋設ボックス、船舶関連、地下ピットなど、長時間水にさらされる可能性のある環境に適しています。
< IP69K >
- 防塵 : 6 … 粉じんの侵入を完全に防止
- 防水 : 9K … 近距離からの高圧・高温洗浄(水・スチームジェット)に耐える
→ 食品・飲料工場、車両洗浄設備、医療機器など、定期的に高圧洗浄・蒸気洗浄を行う設備に最適です。
「IP67 だから IP66 も自動的に満たす」とは限らない?
IP67 以上の等級を持つエンクロージャが、必ずしも IP66(強い噴流水)を満たすとは限りません。そのため、IP66/67/69K のように複数の等級を併記している製品もあります。
ケーブルグランドや筐体を選定する際は、「一時的水没が問題なのか、高圧洗浄なのか」を明確にし、機械側の洗浄・運用条件に合わせて IP 等級を選ぶことが重要です。
用途別・ケーブルグランド選定のヒント
1. 制御盤・一般産業機械
- 基本 : プラスチック製、真鍮製ケーブルグランド(IP66/67 クラス)
- ノイズに敏感な装置 : EMC 対応真鍮グランド(HELUTOP MS-EP4 等)でシールド接地を確保
- ケーブル本数が多い盤では、サイズとクランプ範囲を事前に整理しておくと配線がスムーズ
2. 食品・飲料工場、洗浄を伴う設備
- ステンレス製 IP69K 対応ケーブルグランドを優先
- 表面が滑らかで、水・洗浄液が滞留しにくい形状を選ぶ
- 高圧洗浄ノズルの位置・角度も考慮し、ケーブル引き込み部に直接ジェットが当たる場合は IP69K を推奨
3. 太陽光発電・屋外エネルギー設備
- 長期にわたる紫外線・温度変化に耐えるケーブル・アクセサリが必須
- PV 用ケーブル(SOLARFLEX® シリーズ)と組み合わせて、
PVDF 製ケーブルグランド(HSK-PVDF など)を選定すると、耐候性を高いレベルで確保できます。
4. 鉄鋼・重工業・高温環境
- 高温・粉じん・振動など、極めて厳しい環境では
真鍮・ステンレス製ケーブルグランドと、耐熱ケーブルの組み合わせが適しています。
材質・形状・IP 等級をセットで考える
ケーブルグランドの選定では、次の 3 点をセットで検討することが重要です。
- 材質
- プラスチック/真鍮/ステンレス/PVDF など
- 「腐食」「強度」「コスト」のバランスで判断
- 形状・構造
- 標準ストレート/フラットケーブル用/EMC 対応/ねじなしスナップインなど
- ケーブル種別・取り付けスペース・配線工数に合わせて選択
- IP 等級
- IP66 : 粉じん+強い噴流水
- IP67 : 一時的な水没
- IP68 : 条件付きの継続水没
- IP69K : 高圧・高温洗浄
HELUKABEL Japan では、ケーブルとケーブルグランドをワンストップでご提案可能です。「どの材質がよいか分からない」「IP69K まで必要か判断できない」といった場合は、回路構成や設置環境をお知らせいただければ、最適な組み合わせをご提案します。
お問い合わせ: info@helukabel.jp または お問い合わせフォーム よりお気軽にご連絡ください。