ドイツ・日本の異文化紹介 4 : 電気工事の安全と品質を高める配線作業用ワークブーツ

ドイツの代表規格 : EN ISO 20345/EN 50321-1/ESD関連
- EN ISO 20345(安全靴の基本要件)
つま先保護(200J)などを規定。用途別に**S1/S2/S3…**のクラス分けがあり、滑り・耐油・耐貫通など付加性能の組み合わせで選定します。 - ESD(静電気対策)
電子部品保護のため、足~床~大地へ静電気を連続的に逃がす靴。一般的に 0.1MΩ~100MΩ の抵抗範囲(EN/IEC 61340 系)で評価されます。※“帯電防止(antistatic)”は許容上限が 1,000MΩ で、ESD とは要件が異なる点に注意。 - EN 50321-1:2018(活線用・絶縁フットウェア)
送配電・高電圧設備など活線作業向けの絶縁靴/オーバーブーツ。クラス別(例 : Class 3 で最大作業 26.5kV)に試験・使用範囲を定義します。ESD 靴とは目的が逆で、人体を電気から絶縁します。 - DGUV 112-191(ドイツの運用規程の一例)
中敷き(インソール)を変更する場合など、適合を損なわない運用が求められます。
日本の代表規格 : JIS T 8101(安全靴)/JIS T 8103(静電靴)
- JIS T 8101(安全靴)
材料区分(クラスI=革、クラスII=総ゴム等)や作業区分(U/H/S/L=超重~軽作業)などを規定。ISO 20345 との対応も示されています。 - JIS T 8103(静電気帯電防止靴)
抵抗値範囲に基づき**「一般静電」と「特種静電」に区分。代表的な規定として、23±2℃ で 1.0×10^5~1.0×10^8Ω**(一般静電)などの抵抗要件が定義されています(試験条件あり)。表示記号(例:ED-…/EDX-…)で能力を判別。 - 日本市場の絶縁靴(例)
国内では使用電圧(例:AC300V以下)などを製品仕様で明示する絶縁長靴が広く流通しています。活線作業・低圧配電など、現場要件に合わせて仕様確認が必須です。
ドイツ vs 日本 : 配線・盤内作業での実務的な違い
観点 | ドイツ(例) | 日本(例) |
基本安全靴 | EN ISO 20345(Sクラス) | JIS T 8101(U/H/S/L、クラスI/II) |
ESD 対策 | EN/IEC 61340 に準拠した ESD 靴の使用が一般的。0.1MΩ~100MΩ などで評価 | JIS T 8103 の一般/特種静電を用途で選択 |
活線作業の絶縁 | EN 50321-1:2018 でクラス別に明確 | 国内は製品仕様(使用可能電圧等)を確認して選定 |
インソール等の運用 | DGUV 112-191 等で適合維持を厳格に運用 | 静電・絶縁性能を損なわない純正部材・試験が前提 |
(※表は代表例。実運用は現場リスクアセスメントに従います。)
現場別の“正しい選び分け”
- 電子機器・制御盤内の配線/ESD 保護が重要
→ **ESD 靴(EN/IEC 61340系、JIS T 8103)**を選定。抵抗範囲・床材・アースを含めた EPA 運用が肝心です。 - 活線・高電圧設備の保守
→ 絶縁靴/オーバーブーツ(EN 50321-1のクラス適合)。手袋・工具・敷物など絶縁 PPE 一式でのシステム運用が前提。 - 一般的な屋内配線・設備工事
→ S クラス/JIS 8101 の作業区分をベースに、耐滑・耐油・耐貫通など付加性能で最適化。ESD 管理が必要なら JIS 8103 / ESD適合モデルへ。 - 低圧配電周辺でのリスク低減
→ 製品仕様に使用電圧が明示された絶縁長靴を選び、試験条件(例:耐電圧 1 分間)まで確認。
よくある誤解(NG 例)
- ESD 靴=感電防止ではありません(逆に“電気を通して逃がす”靴)。感電リスクがある作業では絶縁靴が必要です。
- インソールや改造で規格適合を失うことがあります。運用規程に従い適合維持を。
失敗しないチェックリスト
- 現場の**電気リスク(ESD/感電)**を分けて考える
- 必要規格 : EN ISO 20345 / JIS T 8101(基本)、ESD : EN/IEC 61340 / JIS T 8103、絶縁 : EN 50321-1(活線)
- 抵抗値・クラス・付加性能(耐滑 F、耐油、耐貫通など)を確認
- 床材・アース・リストストラップ等の EPA 一体運用を設計
- 電気工事 靴
- ESD 静電靴
- 絶縁靴
- EN ISO 20345
- EN 50321-1
- IEC 61340
- JIS T 8101
- JIS T 8103
- 配線作業 安全靴 選び方
- 盤内配線 PPE
- 電気設備 活線作業 ブーツ
- ドイツ 規格 靴
- 日本 規格 靴