電線・ケーブルの電流許容度比較 : JIS(日本規格)とVDE(ドイツ規格)の違い
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電線・ケーブルを選定する際、最も重視される要素のひとつが「電流許容度(許容電流)」です。本記事では、日本の JIS 規格とドイツの VDE 規格における電流許容度の違いをわかりやすく解説します。特に、両規格で設定される周囲温度条件の差異に着目し、JIS 規格の 40 ℃ 条件での許容電流を参照したい場合の対応方法をご案内します。
電流許容度とは?
電流許容度は、ケーブルが長時間連続して通電しても安全かつ劣化を抑制できる最大電流値です。過大な電流が流れるとケーブル内部の導体温度が上昇し、被覆材の劣化や絶縁不良を引き起こす恐れがあります。
JIS規格(日本)の特徴
- 規格番号 : JIS C 3306
- 周囲温度基準 : 40 ℃
- 適用範囲 : 屋内外の一般配線、制御盤配線など
- 安全係数・温度上昇 : 定められた温度上昇限度内での連続通電を保証
JIS 規格では、ケーブル使用環境として日本国内の高温多湿環境を想定し、周囲温度 40 ℃ を基本条件に許容電流を算定しています。
VDE 規格(ドイツ)の特徴
- 規格番号 : VDE 0298-4
- 周囲温度基準 : 30 ℃
- 適用範囲 : 欧州の産業設備、建築設備など
- 安全係数・温度上昇 : 欧州の平均的な周囲温度条件に合わせた設計
VDE 規格では、日本よりも低めの 30 ℃ を基準に設定しており、この違いが許容電流値に影響を及ぼします。
周囲温度設定の違いがもたらす影響
規格 | 周囲温度条件 | 許容電流の目安 | コメント |
JIS C 3306 | 40 ℃ | VDE 比 約 0.9 倍〜 0.95 倍 | 高温条件下でも安全に使用できる設計 |
VDE 0298-4 | 30 ℃ | JIS 基準より若干高め | 日本の高温環境ではオーバースペックとなる場合あり |
ポイント : 同じケーブルでも規格が異なると許容電流値は変わります。特に、日本の高温環境下で確実な性能を求める場合は、JIS 規格の基準に合わせたデータ参照が重要です。
同じ線径で許容電流はこれだけ変わる
導体断面積 | JIS 40 ℃(代表値) | VDE 30 ℃(代表値) | 差分 |
2 mm² | 17 A | 20 A | ▲15 % |
5.5 mm² | 34 A | 40 A | ▲15 % |
※数値は典型例です。実際の値はケーブル構造・敷設方法・周囲環境で変動します。
設計・選定時に押さえる4つのポイント
1. 基準温度の確認 — 海外仕様書の ampacity は VDE/IEC 基準の場合が多い
2. 敷設条件の見直し — 束線・配管内など熱がこもる場合は補正係数を適用
3. 負荷率の高い回路は余裕を持った線径を選択
4. 40 ℃超の環境では追加補正が必須 — 炉前・屋外高温地域など
JIS 40 ℃ 条件での許容電流表のご提供について
「標準カタログのVDE条件(30 ℃)ではなく、JIS条件(40 ℃)での許容電流値を知りたい」というお客様には、個別対応にて専用の許容電流表をご用意いたします。お気軽に お問い合わせフォーム または 担当者へのメールよりご依頼ください。
まとめ
- JIS 規格(40 ℃)と VDE 規格(30 ℃)では、同一ケーブルの許容電流に差が生じる
- 日本の高温多湿環境での安全性を重視するなら、JIS 基準をベースに選定を
- 40 ℃ 条件での許容電流表は個別対応でご提供可能
電線・ケーブルの最適選定には、使用環境に合わせた規格の理解が不可欠です。HELUKABELでは、JIS・VDE どちらの条件にも対応した技術サポートをご用意しております。