「相互容量」「カップリング抵抗」とは?ノイズに強い配線の選び方

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産業機械の立ち上げや既存ラインのトラブル対応で、「30 MHzで約250 Ω/km」や「相互容量 60 pF/m」といった表記を見て戸惑ったことはありませんか?本記事では、HELUKABEL 製品のデータシートにも登場する相互容量(coupling capacitance)カップリング抵抗(coupling resistance)について、“電気の回り込みをどれだけ起こしやすいか/起こしにくいか”という実務目線でわかりやすく紹介します。選定と配線のコツもあわせて解説します。

データシートに出てくる「結合」の正体は?

配線同士やケーブル外部の電界・磁界が原因で信号の回り込み”(ノイズの乗り移り)が起きることがあります。これを結合(couplingと呼び、そのうち電界が主因の回り込みを数値化したものが結合容量(=相互容量/coupling capacitance、低〜中周波域のシールド性能を数値化したものが結合抵抗(=転送インピーダンス/transfer impedance と同義で扱われることが多い)です。

相互容量(coupling capacitance)=「となりに伝わる“静電気の通り道”の大きさ」

  • イメージ : 隣り合う線が“うすいコンデンサ”でつながっているイメージ。値が大きいほど、となりへ電気(特に高周波成分)が移りやすい
  • 単位 : pF/m(ピコファラド毎メートル)。
  • データシート例 : ある計装・ドラッグチェーン用ケーブルの相互容量(core/core)≈60 pF/m といった表記。値が小さいほどクロストーク抑制に有利です。
  • 影響要因 : ツイストの強さ、ペア構造、絶縁体の材質と厚み、配線間距離など。

ポイント : FA機器のアナログ信号や高速デジタルのペア線では、相互容量の小さいケーブル適切なツイストペアを選ぶと、隣線からの影響を減らせます。

カップリング抵抗(coupling resistance/transfer impedance)=「シールドの“電流漏れ”にどれだけ強いか」

  • イメージ : シールドに流れ込んだ“迷い電流”が、内側の信号線へどれくらい電圧として伝わってしまうかを表す指標。
  • 周波数依存 : 一般に低〜数十 MHz 帯でのシールド効果を評価する際に使います。値が小さいほど良好なシールド
  • 表記例 :「カップリング抵抗 30 MHz で約 250 Ω/km」(あるいは 250 Ω·km⁻¹)。これはその周波数帯でのシールドの強さを示す代表値で、同条件で比較すれば数値が低いほど外来ノイズを通しにくいと理解できます。HELUKABEL の複数データシートで 30 MHz ≈ 250 Ω/km の例が見られます。
  • 影響要因 : シールドの構造(編組/箔の重ね/二重シールドなど)や被覆材、編組のカバレッジ(編組密度)、アース接続の 360° クランプ実装など。

ポイント : 同じシリーズでも“シールドなし/フォイルのみ/編組+フォイル(二重)”でカップリング抵抗は大きく変わります。インバータ駆動(VFD)やサーボ周りには、二重シールドでカップリング抵抗の小さいタイプが推奨されます。

数字の見方 : 実務では「相互容量は小さく、カップリング抵抗は小さく」を目安に

  • アナログ計測・通信線 : 相互容量(pF/m)が小さいほど信号の劣化やクロストークが減りやすい。
  • モータ・インバータまわり : カップリング抵抗(Ω/km)が小さいほど、シールドとして外来ノイズや漏れを抑えやすい。
  • 同条件比較がコツ : 周波数や測定条件が異なると直接比較は困難。同じ周波数(例 : 30 MHz)で比べるのが基本です。

ケーブル選定と現場でのチェックリスト

  • 用途に合うシールド構造を選ぶ(無遮へい/箔/編組/二重)。VFD・サーボには二重シールドを第一候補に。
  • 相互容量(pF/m)は小さい方が隣線影響を低減。ツイストペア/ペアごとのシールド(PIMF)も検討。
  • 360° 接地クランプでシールドを確実にアースへ(ピッグテール配線は避ける)。
  • ケーブルルーティング : 電源線と信号線は離す/交差は直角に/長並走を避ける。
  • 実機評価 : ノイズが懸念される周波数帯で、装置の EMC 試験/波形観測を実施して確認。

よくある質問(FAQ)

Q1 : 値が“pF/m”“Ω/km”と単位が違うのはなぜ?
A : 相互容量(pF/m)は線間の“静電容量”そのもの、カップリング抵抗(Ω/km)はシールドの“伝達されやすさ”を抵抗値として表した別の指標だからです。役割が異なるため、どちらもチェックが必要です。

Q2 :「30 MHzで約 250 Ω/km」は良いの?
A : 周波数・構造・用途で最適値は変わりますが、同条件の比較数値が小さい方がシールド性能が高いと読みます。VFD / サーボ用途では二重シールドの低結合抵抗タイプが一般的に好まれます。

Q3 : まずはどの製品を見ればいい?
A : HELUKABEL の 製品検索(Product Finder) から、シールド構造や用途カテゴリで絞り込み、個別データシートの相互容量カップリング抵抗を確認してください。

データシート例(相互容量・カップリング抵抗の記載)

    • SUPER-PAAR-TRONIC-C-PUR® : 相互容量 ≈60 pF/m、カップリング抵抗 30 MHz ≈250 Ω/km
    • 制御・計装ケーブルの例 : カップリング抵抗 30 MHz ≈250 Ω/km
    • VFD 向け電源ケーブル例 : カップリング抵抗 最大 250 Ω/km(二重シールド構造)。

お問い合わせ・次のステップ

最適なシールド構造やサイズ選定、在庫・納期のご相談は HELUKABEL まで。 製品検索 から用途別にお選びいただけます。

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