水上太陽光発電(Floating PV)の配線

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なぜ水上 PV の「配線」は難しいのか

水上太陽光発電(Floating PV)は、ため池・ダム・調整池などの水面を活用できる一方、配線(ケーブル/コネクタ/固定方法)に独特のリスクがあります。陸上設備の“常識”のまま設計すると、次のような不具合が起きやすくなります。

  • 湿気・浸水・結露 : DC コネクタ内部の浸水、絶縁抵抗低下、トラッキング
  • 波・風での繰り返し揺動 : ケーブルの擦れ・屈曲疲労、固定部の破断
  • 腐食(塩害含む): 金具・端子・シールド部の腐食、接地不良
  • 生物要因 : 鳥害、藻・貝の付着、齧歯類(岸側)による損傷
  • 点検性の悪化 : 水上はアクセスが制限され、軽微な不具合が重大化しやすい

日本でも、太陽電池発電設備の設計・施工に関する技術資料としてガイドラインが位置づけられています(経済産業省が関連ガイドラインを参照する旨を案内)。

水面環境の「5 大ストレス」と配線への影響

Floating PV の配線設計では、まず環境条件を“分解”して捉えるのがコツです。

(1) 水・湿気(浸水/結露/毛細管現象)

  • コネクタ合わせ面、ケーブルの傷、保護管端部などから水が入り、DC 側で絶縁劣化が起きることがあります。
  • 水上は昼夜の温度差で結露しやすく、「入らない設計」+「入っても致命傷にしない設計」の両輪が重要です。

(2) 紫外線・オゾン・熱

  • ケーブル外被の劣化(ひび割れ)は、浸水・トラッキングの入口になります。
  • 太陽光用途では、UV・耐候は必須条件です。

(3) 揺動・擦れ・引張(メカ要因)

  • フロート間の相対変位で、ケーブルが“こすれる/引っ張られる/折れ曲がる”を繰り返します。
  • 固定点が少ない、余長がない、曲げRが小さい、金具が鋭い——この組み合わせが故障の典型です。

(4) 腐食(淡水でも起きる/金属の組み合わせ)

  • 水上は湿潤状態が長く、ボルト・クランプ・端子などが腐食しやすい。
  • 異種金属接触による腐食(いわゆるガルバニック腐食)も設計で避けたいポイントです。

(5) 施工・保守制約(アクセス性)

  • 水上は、点検・交換が陸上より重い作業になりがち。
  • だからこそ初期設計で「点検しやすい配線」にしておくことが、LCOE(発電コスト)に直結します。

ケーブル選定 : 水上 PV では「規格+耐水グレード」を押さえる

Floating PV の配線で最重要なのは、PV 用途としての規格適合に加えて、水上向けの耐水要件を満たすケーブルを選ぶことです。

1. 基本となる PV ケーブル規格

  • IEC 62930 : PV システム DC 側(〜1.5kV DC)の単芯 PV ケーブルに関する国際規格。
  • EN 50618H1Z2Z2-K): 欧州で広く使われる PV ケーブル規格(国際プロジェクトでも参照されやすい)。

2. Floating PV で注目される耐水認証(例 : TÜV Rheinland 2PfG 2750

Floating PV では、通常の屋外 PV よりも厳しい耐水性が求められ、TÜV Rheinland の Floating PV 向け要件(2PfG 2750)では、水上設置に向け“改良された耐水性”を求める枠組みが提示されています。

3. HELUKABELの太陽光発電向けケーブル(例)

HELUKABEL は太陽光発電向けに、TÜV 認証 lead を含む SOLARFLEX® ブランドを展開しています。難燃・ハロゲンフリーに加え、オゾン/紫外線/酸・アルカリ/加水分解/アンモニア耐性といった屋外・過酷環境を意識した特性をもっています。
さらにフローティング用途として、TÜV 2 PfG 2750 認証を受けたシリーズもあります。
※実案件では、水質(淡水/汽水/塩害)、水深、配線方式、保護管の有無、コネクタ方式などで最適解が変わります。

ケーブル固定(ルーティング)の実務 : 水上 PV は「3 層」で考える

Floating PV の配線は、ざっくり (A) モジュール近傍(ストリング)→ (B) フロート間 → (C) 岸側・陸上設備 の 3 層で設計すると破綻しにくくなります。

(A) モジュール近傍(ストリングケーブル : DC

目的 : コネクタ部を守り、揺動を吸収し、擦れをなくす

  • コネクタは水が溜まらない向き(下向きだまりを作らない)
  • ドリップループ(雨だれループ)で水の侵入経路を断つ
  • 結束は「締めすぎない」+「角で擦れない」
  • ケーブルはモジュール裏で適切に支持し、コネクタに荷重をかけない(ストレインリリーフ)

(B) フロート間(動く区間)

目的 : 相対変位に耐える余長保護を両立

  • フロート間は余長(たるみ)を設計値として確保(風・波で引っ張り切らない)
  • 保護管(コルゲート管、耐候チューブ)を使い、擦れと局所屈曲を防ぐ
  • 固定点は「点」ではなく、一定間隔の“面支持”を意識(局所応力を避ける)
  • 金具は角を丸め、異種金属接触・腐食リスクを下げる

(C) 岸側・陸上設備(集電箱/インバータ/連系)

目的 : 水上陸上の境界を弱点にしない

  • 水上から陸上への立ち上がりは、揺動+曲げ+摩耗が集中しがち
  • 立ち上がり部は保護管+曲げR確保+支持点追加が効きます
  • 集電箱・貫通部は、防水グランド/シール材/点検性をセットで設計

コネクタ・防水・絶縁 : 故障の多くは「小さな浸水」から始まる

Floating PV では、ケーブル自体よりもコネクタ/接続箱/貫通部が先に弱ります。対策の考え方は次の通りです。

  • IP 等級は条件付き” : 正しい嵌合・締結トルク・部材の組み合わせで初めて成立
  • 施工時にコネクタ内へ水・砂・油分が入ると、後でトラブル化しやすい
  • 直流はアークが継続しやすく、絶縁劣化の影響が大きい
  • 仕上げとして、目視点検しやすいルート(開けやすい・見える・追える)を作る

認証・法規・要求事項 : 設計段階で「監査に耐える根拠」を揃える

Floating PV のプロジェクトでは、設計レビューや第三者確認で「根拠」が問われます。最低限、次をセットで準備すると強いです。

  • PV ケーブル規格適合(IEC 62930 / EN 50618 等)
  • 水上用途の耐水要求(例 : TÜV Rheinland 2PfG 2750
  • 日本国内の位置づけとして、太陽電池発電設備の設計・施工に関するガイドラインが参照されること(経済産業省の案内)

HELUKABEL が提供できること

HELUKABEL の日本語サイトでは、太陽光発電向けケーブルの考え方や製品情報を紹介しています。

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