シングルペア・イーサネット用ケーブル:私たちの向かう先とは
既存の通信規格よりも優れた SPE ソリューションとは?
シングルペア・イーサネット(SPE)は、産業用通信の未来を形作る重要なトレンドのひとつと考えられています。導体が1対のこの新しい通信技術には、高速データ伝送や省スペース、低コストなどの利点があげられます。しかし、どこで利用されるのか、どのタイプのケーブルが必要になるのか、そして SPE は既存の通信規格と比べてどのような性能を発揮するのでしょうか?HELUKABEL は、これらの疑問を『SPE 先駆者サミット』ウェビナーシリーズの一つである『シングルペア・イーサネットケーブリング』と題したウェビナーで、明らかにしてきました。
近年、産業では Profinet や CAT 5e 、 6a 、 産業用イーサネット、イーサキャット など、様々な通信システムが使用されています。一方で、シングルペア・イーサネットは、ギガビット速度でのデータ伝送と、たった 1 対のワイヤーを介した同時電源供給によって、多くのアプリケーションで既存の技術に取って代わる可能性を秘めています。このスマートでフレキシブル、低コスト・省スペースのソリューションは、フィールドレベルまでリアルタイムの通信を可能にします。
SPE を使用するための基本条件は、ターミナルやプラグ接続から配線にいたるまで、適切な技術インフラが整備されていることです。メーカーやユーザー側の切り替えを容易にするため、すでに Profinet で使われているケーブル分類が SPE にも定義されています。
- タイプA:常設用単線電線
- タイプB:柔軟な用途や振動に対応する撚線
- タイプC:高動的用途(ドラッグチェーンなど)の撚線
- タイプR:ロボット用途のねじり試験済撚線ケーブル
ドラッグチェーンとロボットケーブルは、主に曲げまたはねじり負荷容量用に設計されたスクリーニングの違いによって異なります。
さらに、用途に合わせてケーブルごとに異なるシース素材が使用されます。ケーブルタイプ A と B は、通常 PVC のシールドが使用されます。また、ハロゲンフリー、食品安全性、耐油性、耐薬品性など、さまざまな選択肢があります。タイプ C のケーブルは、PUR や PVC、サントプレンがあり、タイプ R のケーブルにも PUR とサントプレンがあります。
ジャケット | ハロゲンフリー | 難燃性 | 低煙 | 価格 | 耐油性 | 耐屈曲性 | 耐摩耗性 | UL 燃焼試験 |
PVC UL | なし | 中~高度 | なし | 低~中度 | 低~高度 | 中度 | 中度 | VW1, FT1, FT4 |
FRNC/LS0H/ LSZH | あり | 中~高度 | あり | 中度 | 低度 | 低度 | 低度 | VW1, FT1, FT4 |
PE | あり | なし | あり | 中度 | 低度 | 低度 | 低度 | なし |
PUR UL | あり | 中度 | 中度 | 高度 | 高度 | 高度 | 高度 | VW1, FT1, CFT |
TPE (サントプレーン) | なし | 中度 | 中度 | 高度 | 高度 | 高度 | 高度 | VW1, FT1, CFT |
TPE (サントプレーン) | あり | なし | 中度 | 高度 | 高度 | 高度 | 高度 | なし |
表1: SPE ケーブルのシース素材別特性
シングルペア・イーサネットはデータ伝送において、速度と範囲の点でいくつかのオプションがあります。
- 10BASE-T1 : データレート最大 10 Mbit/s 、通信距離最大 1,000 m
- 100BASE-T1 : データレート最大 100 Mbit/s 、通信距離最大 40 m
- 1000BASE-T1 : データレート最大 1 Gbit/s 、通信距離最大 40 m
- MultiGigBASE-T1 : データレート最大 2,5 / 5 / 10 Gbit/s 、通信距離最大 15 m
産業環境では現在、 10BASE-T1 と 1000BASE-T1 が最も重要です。現在開発中の MultiGig 技術は、将来さらなる可能性を開くでしょう。 HELUKABEL はすでに、10BASE-T1 と 1000BASE-T1 用の 3 種類の SPE ケーブルをポートフォリオに追加し、製品レンジは常に拡大しています。
既存の産業通信技術をシングルペア・イーサネットと比較すると、アプリケーションによって多くの利点が見えてきます。例えば、 10BASE-T1 は Profibus PA と比べて、顕著に周波数帯域が広く、最大 320 倍の速度 - 動画の伝送などに十分な速さ - での伝送が可能です。
Profibus PA / ファンデーションフィールドバス | SPE 10BASE-T1L | |
断面積 | 単線または撚線 AWG 18 /撚線 AWG 16 | |
最大距離 | 非危険区域において 1,900 m まで 危険区域において 1,000 m まで (IEC 60079-11 準拠の FISCO 電源) | 1,000 m まで (TI phy DP83TD510E > 2,000 m Peer-to-Peer) |
インピーダンス | 100 ± 20 Ω @ 31,25 kHz | 100 ± 15 Ω @ 20 MHz |
周波数帯域 | 39 kHz まで | 20 MHz まで |
最大データ速度 | 31,25 kbit | 10 Mbit |
代表的なコネクタ | M12 a-coded 4 PIN IP67 7/8 inch PI67 | M8/M12 SPE IEC 63171-6 |
表2: SPE 10BASE-T1 と Profibus PA の比較
USB 技術と比較して、 1000BASE-T1と MultiGigBASE-T1 は、電力供給が大きいだけでなく、顕著に高いデータ速度と広いデータ範囲を有しています。 1000BASE-T1 は、Profibus DP や CAN、 産業用イーサネットを使用した配線に比べて、直径や重量、必要な銅の量、曲げ半径が小さく、より好ましい選択肢です。
比較 | Profibus DP | SPE 1000BASE-T1 | SPE 1000BASE-T1 | SPE 長所と短所 |
ドラッグチェーン設計 | ドラッグチェーン設計 | ドラッグチェーン設計 | ||
断面積 | AWG 23/19 | AWG 26/19 | AWG 22/19 | |
データ速度 | 12 Mbit | 1 Gbit | 83倍以上のデータ速度 | |
ケーブル断面 | 8,0 mm | 4,9 mm | 6,3 mm | 21-38% の省スペース |
最大距離 | 100 m* | 40 m | 短さが短所 | |
電源 | なし(ハイブリッド) | PoDL 50 W まで | 電源込み | |
ケーブル重量 | ~ 77 kg/km | ~ 29 kg/km | ~ 50 kg/km | 35-60% 軽量 |
銅重量 | 25 kg/km | 16 kg/km | 24 kg/km | 4-36 % 低銅 |
曲げ半径チェーン | 96 mm | 59 mm | 76 mm | 20-39% 曲げ半径縮小 |
*高速12Mビットでの距離
表3: SPE 1000BASE-T1 と Profibus DP の比較
HELUKABEL は最近、SPE 産業用パートナーネットワークの『SPE 先駆者サミット』シリーズの一環で『シングルペア・イーサネット(SPE)ケーブル配線』ウェビナーを行いました。ここでは、HELUKABEL の専門家である Horst Messerer が、既存の通信規格と比較して SPE 技術の利点について詳細なプレゼンテーションを行っているほか、現在入手可能なケーブルとコネクタについて説明しています。ウェビナーは、 こちら から無料でいつでもご覧いただけます。