ドイツの金属資源利用の歴史 - 鉱山から循環経済へ

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中世の銀・銅・錫から、ルール地方の石炭・鉄鋼、そして現在の電動化・水素社会を支える銅やアルミ、重要鉱物まで、ドイツの産業発展は金属資源の獲得・加工・活用の歴史そのものです。政策も「安定調達」「脱炭素」「循環経済」を軸に進化してきました。

古代~中世 : 青銅器・鉄のはじまり

金属利用の出発点は青銅(銅+錫)。ヨーロッパ広域で青銅器文化が普及し、金属加工技術が進化しました。続く鉄器時代には湿地で生成する**沼鉄鉱 (bog iron)**も活用され、比較的素朴な製錬技術で初期の鉄生産が可能になりました。これらは中部ヨーロッパ (現在のドイツ域を含む) で広く観察される一般的潮流です。

中世~近世 : ハルツ山地とエルツ山地が拓いた銀・銅・錫・コバルト

  • ランメルスベルク鉱山 (ハルツ山地、ニーダーザクセン州) は、11 世紀から 1980 年代まで約 1,000 年超の操業を続けた稀有な鉱山で、銀・銅・鉛などを産出。世界遺産に登録され、ヨーロッパの採鉱史を物語ります。
  • エルツ山地 (ザクセン州 / ボヘミア国境) は、12 世紀の銀鉱に始まり、15 ~ 16 世紀の銀隆盛、その後の錫・コバルトなど多様な金属を産出。鉱業技術発展の舞台として世界遺産に登録されています。

これらの鉱業集積は、冶金・精錬・造幣や道具製作といった周辺産業の高度化を促し、ドイツ諸邦の経済基盤を強化しました。

産業革命~ 20 世紀前半 : ルール地方の石炭・鉄鋼が大国の屋台骨に

19 世紀に入ると、ルール地方の石炭が鉄鋼と機械工業を強力に牽引します。1811 年創業のクルップ (現 thyssenkrupp のルーツ) など重工・鉄鋼企業が成長し、ドイツは世界有数の工業国へ。エッセンのツォルフェライン炭鉱は象徴的存在で、1847 年に創業、1986 年閉山。地域は今日、産業遺産と文化拠点として再生が進みます。

戦後~ 1990 年代 : 国内鉱山の縮小と輸入転換、技術の高付加価値化

戦後はドイツ国内の金属鉱山や炭鉱が段階的に縮小・閉山。製鉄は国際市場からの鉄鉱石・コークス輸入が主流化し、特殊鋼・自動車・機械など高付加価値ものづくりへ重心が移りました。石炭・鉄鋼の中核地域だったルールも、研究・文化・先端サービスへ転換を進めています。

現代 : 脱炭素・電動化で高まる金属の重要性

再エネ拡大・電動化・デジタル化が進む現在、銅・アルミ・ニッケル・レアアース等の重要原材料はサプライチェーンの要です。EU は**「重要原材料法 (CRMA)」**を施行し、2030 年までに採掘 10% / 精製 40% / リサイクル 25% といった目標を掲げ、単一国依存 65% 上限の方針で供給多角化を加速。2025 年 3 月には 47 件の 戦略プロジェクト が公表されています。

ドイツ連邦政府も**「原材料戦略」**を更新し、安定調達・資源効率・リサイクル強化を推進。**循環経済法 (KrWG) とあわせて、資源循環の制度基盤を整備しています。さらに「国家循環経済戦略 (NKWS)」**の策定・公表が進み、資源需要の抑制やデザイン段階からの長寿命化・再資源化を包括的に進める方針です。

水素時代への布石 : 産業脱炭素と金属需要

ドイツは国家水素戦略を 2023 年に更新し、2030 年までに国内電解容量 10GW を目標化。2024 年 7 月には水素輸入戦略も承認し、港湾・パイプライン・認証などの国際バリューチェーン整備を進めます。水素製造・輸送・電解装置には大量の銅・ニッケル・特殊合金などが不可欠で、金属の重要性は一段と高まっています。

日本のお客様への示唆 : 安定供給・高品質・循環への対応

  • 電動化・FA・再エネ設備では、高導電率の銅導体ケーブル軽量化のためのアルミ導体厳環境向けシース材などが鍵となります。
  • サプライチェーンの複線化 : EU / ドイツの政策動向は、調達先の多様化・トレーサビリティ・リサイクル含有材の活用を後押し。設計段階からの代替材・循環設計でコストとリスクを最適化できます。
  • HELUKABEL は、産業・インフラ用途向けケーブル / 付属品をグローバル供給しています。日本のお客様の現場要件に合わせた耐環境・曲げ性能などの最適解をご提案します。ぜひ、お気軽に お問い合わせ ください。
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