定格電圧とは?「試験電圧」「絶縁破壊電圧」との違い

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定格電圧とは?ケーブル選定で必ず確認したい「試験電圧」「絶縁破壊電圧」との違い

工場や設備のトラブル原因をさかのぼると、「ケーブルの電圧仕様ミスマッチ」に行き着くケースは少なくありません。同じように見えるケーブルでも、「定格電圧」「試験電圧」「絶縁破壊電圧」といったパラメータが異なれば、安全性・寿命・停止リスクは大きく変わります。

本記事では、ドイツに本社を持つケーブルメーカー HELUKABEL GmbH(ヘルカーベル) が、データシートに必ず記載しているこれらの用語について、日本の購買ご担当者様向けに解説します。

なぜ「定格電圧」を理解することが重要なのか

ケーブルは「どれくらいの電圧に継続的に耐えられるか」を前提に設計されています。その基準値が定格電圧(Rated Voltage / Nominal Voltage)です。

  • システム電圧より低い定格電圧のケーブルを使う
    → 絶縁に過大な電界がかかり、絶縁破壊・短絡・火災のリスクが増大
  • 必要以上に高い定格電圧のケーブルを使う
    → 過剰仕様となり、コスト増・配線スペース増につながる

つまり、「機器・系統の電圧」と「ケーブルの定格電圧」を正しく合わせることが、
設備の安全・コスト・保守性を両立する第一歩です。

定格電圧 U0/U とは?基本の読み方

多くの低圧ケーブルのデータシートには、次のような表記が登場します。

  • 例 1 : U0/U = 300/500 V
  • 例 2 : U0/U = 450/750 V

ここでは下記のような意味となります。

  • U0 : 対地電圧(導体と大地/接地された金属部との間の電圧)
  • U : 線間電圧(導体と導体の間の電圧)

国際規格 IEC 60227(450/750V 以下の PVC 絶縁ケーブル)や IEC 60502(1kV〜30kV の電力ケーブル)などに基づき、用途ごとに標準化された電圧クラスが定められています。

定格電圧が決まる要因

定格電圧は、主に以下の要素により決まります。

  • 絶縁体の材質(PVC、XLPE、ゴム、シリコーンなど)
  • 絶縁肉厚・構造(単心・多心、シールドの有無 など)
  • 適用される規格(IEC、DIN VDE、EN 規格など)
  • 想定される環境条件(温度範囲、湿度、汚損、敷設方法)

HELUKABEL のデータシートには、定格電圧とあわせて「温度範囲」「最小曲げ半径」「規格準拠」などが記載されており、総合的な設計判断が可能です。

試験電圧とは?出荷前にケーブルの「耐性」を確認する値

試験電圧(Test Voltage)は、そのケーブルが所定の定格電圧のもとで安全に使用できることを確認するために、工場や試験所で一定時間印加される電圧です。

特徴

  • 通常、定格電圧よりかなり高い電圧が設定される
    例 : 定格電圧 AC 300/500 V のケーブルに 2,000 V〜4,000 V 程度の試験電圧を印加
  • 所定時間(例 : 5 分、15 分など)印加しても絶縁破壊が起こらないことを確認
  • 試験条件は、IEC や DIN VDE 規格、製品規格で定義されていることが多い

試験電圧の役割

  • 製品ロットごとの品質保証
  • 絶縁系の弱点(ピンホール、施工時のダメージなど)を早期に検出
  • 将来の運転中に想定される過渡的な過電圧(サージ、スイッチングなど)に備えたマージン確認

ここで重要なのは、「試験電圧=実際に連続運転する電圧」ではないということです。
試験電圧は、あくまで「定格電圧で長期使用しても問題が起きないか」を確認するための耐圧試験の条件です。

絶縁破壊電圧とは?ケーブルが「限界を超えた」瞬間の電圧

一方、絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage)は、印加電圧を徐々に上げていったとき、絶縁体が耐えきれずに電流が一気に流れ出してしまう限界の電圧を指します。

  • 絶縁が破壊されると、内部に導電経路が形成され、元の絶縁性能には戻りません。
  • ケーブル製品の一部では、データシートに「Breakdown voltage 5,000 V」「Breakdown voltage 8,000 V」のように明記されています。

この値は、研究・設計・品質評価の観点で重要ですが、実運用においては、この値に近づけて使用するべきではありません。
定格電圧と規格上の試験電圧をメイン指標としつつ、絶縁破壊電圧は「安全マージンの上限値」として理解するとよいでしょう。

3 つの電圧用語の違いを一度で理解する

用語の整理

  • 定格電圧(Rated / Nominal Voltage U0/U
    → ケーブルが継続的に動作できる電圧クラス。設計・選定の基準値。
  • 試験電圧(Test Voltage
    → 出荷前や定期検査で印加する、短時間の耐圧試験用電圧。定格電圧より高い。
  • 絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage
    → 徐々に電圧を上げていったとき、絶縁が壊れる限界値。この値付近で使用してはならない。

このように考えると、3 つの用語の役割分担が明確になります。

ケーブル購入・設置時に必ずチェックしたいポイント

機器・系統の電圧クラスと U0/U を一致させる

  • 使用する配電システム(単相/三相、AC/DC)の定格電圧を確認
  • 日本国内で使用する機械・盤の仕様書を見ながら、ケーブルの U0/U が許容範囲内かを必ずチェック

HELUKABEL Japan の記事「 用途に最適なケーブルを選ぶための10のチェックポイント 」でも、最初のポイントとして「定格電圧 U0/U」の確認が挙げられています。

規格と用途を確認する

  • IEC / DIN VDE / EN / UL など、どの規格に準拠しているケーブルか
  • 低電圧(〜450/750V)なのか、高電圧(1kV 以上)用途なのか
  • 制御・信号・動力・イーサネットなど、回路の種類に適した定格か

使用環境(温度・敷設条件)と余裕度

  • 周囲温度が高い、ケーブルが束ねられる、長距離敷設などの場合、絶縁・電流容量への影響が大きくなります。
  • 温度範囲や最小曲げ半径など、データシートの技術データ欄も合わせて確認してください。

将来の拡張や過電圧リスクも考える

  • 将来的な電圧クラスの変更、設備増設の可能性
  • インバータ駆動、雷サージなど、過渡的な過電圧が想定されるか

これらを考慮に入れることで、初期コストと長期的な信頼性のバランスを取りやすくなります。

HELUKABEL のデータシートを読むときのチェックポイント

HELUKABEL の技術資料では、代表的なケーブルについて以下のような情報が明確に記載されています。

  • 定格電圧(Nominal / Rated Voltage U0/U
    例 : AC U0/U 300/500 V、AC U0/U 450/750 V、AC U0/U 600/1000 V など
  • 試験電圧(Test Voltage
    「試験電圧 コア/コア 2000 V」「Test voltage core/core 4000 V」 など
  • 絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage
    「Breakdown voltage 5000 V」「Breakdown voltage 8000 V」と明記されている製品も存在
  • その他の重要項目
    許容導体温度
    温度範囲(可動/固定)
    最小曲げ半径
    難燃性・耐油性・耐UV・ドラッグチェーン適合などの特性
    準拠規格(例 : DIN VDE 0285-525-2-51 / DIN EN 50525-2-51 など)

これらを一緒に確認することで、安全性・耐久性・敷設性まで含めた総合的なケーブル評価が可能になります。

HELUKABEL グループは、1978 年の創業以来、ドイツ国内の複数工場(例 : Windsbach, Meissen)およびポーランド工場等で、産業向けケーブルを製造しています。Windsbachには試験設備も併設されており、定格電圧・試験電圧・絶縁破壊電圧を含む各種特性を検証しながら、さまざまな産業分野に向けた製品開発を行っています。

日本市場向けには、HELUKABEL Japan が日本語の技術資料・ニュース記事を通じて、ケーブル選定や規格に関する情報を発信しています。

  • 定格電圧や試験電圧の確認方法
  • 日本国内設備向けのケーブル選定相談
  • 特殊環境(高温・耐油・クリーンルーム等)向けのカスタマイズ

など、お客様の用途に合わせたご提案が可能です。ぜひ お問い合わせ ください。

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