ヨーロッパにおけるオオカミ復活の経緯

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私たち HELUKABEL(本社:ドイツ・ヘミンゲン)は、産業・インフラ分野のお客様にケーブル/電線ソリューションを提供する企業です。社会と産業をつなぐ存在として、ヨーロッパの自然・環境や規制動向の正確な情報発信も重要だと考えています。本稿では、ヨーロッパとドイツで進むオオカミ(Canis lupus)の復活について、歴史的経緯、現在の個体数、そして政策の最新トレンドを整理します。

絶滅寸前に至った理由 : 迫害と駆除の歴史

18 ~ 19 世紀のヨーロッパでは、家畜被害への懸念から組織的な駆除や懸賞金制度が広く行われ、中央ヨーロッパでは第二次大戦期までにオオカミがほぼ姿を消しました。ドイツでは 1904 年にラウジッツで“最後の一頭”が射殺された記録が象徴的です。こうした長期の迫害・毒餌・落とし穴等が、地域的な絶滅に直結しました。

反転の契機 : 国際条約と EU 法による“法的な盾”

転機は 1979 年のベルン条約と 1992 年の EU 生息地指令(Habitats Directive)でした。長らくオオカミは「厳重保護(strictly protected)」の対象とされ、加盟国は生息地保全・違法捕殺の防止を義務付けられてきました。これが再定着の土台を作りました。

最新アップデート : 2025 年 3 月 7 日、ベルン条約で「厳重保護」→「保護種」へダウンクラス(附属書II→III)が発効。これに整合して、2025 年 6 月 5 日に EU も生息地指令の附属書改正を最終承認し、管理の柔軟性を各加盟国に付与しました(ただし「保護」自体は継続)。

ドイツの“帰還”プロセス" : 2000 年に野生繁殖が復活

ドイツ東部ラウジッツ(ザクセン州)では 2000 年に約 150 年ぶりの野生繁殖が確認され、その後ポーランドからの自然再移入と法的保護を背景に、分布は継続的に拡大。2006 年以降、テリトリー数は着実に増え、現在は多くの連邦州に定着しています。

今の数は?最新データ(ドイツ・EU)

  • ドイツ : 209群(Rudel)・46 つがい・19 定住単独個体モニタリング年 2023/2024 : 期間 2023/5/1–2024/4/30)。群の最多はブランデンブルク州、次いでニーダーザクセン州、ザクセン州。
  • ヨーロッパ/EU : 欧州委員会の集約値では 2023 年時点で約 23,000 (2016 年比+35%)。学術レビューでも 2022 年時点で欧州全体 21,500 (EU内約 19,000)と報告され、10 年で +58% の回復が示されています。

※個体数は季節変動が大きく、国や地域で調査法が異なるため、群・つがい数を基準に見るのがより頑健とされています。

保護から“管理”へ : 政策の現在地

回復は喜ばしい一方、家畜被害や地域衝突が増加し、各国は電気柵・牧羊犬・補償制度の拡充と問題個体の許可捕獲などを組み合わせる“共存型管理”にシフトしています。2025 年の EU 法改正は、科学的根拠に基づく柔軟な地域管理を可能にする一方、保全上の「良好な状態」維持を各国に求めています。

まとめ : 絶滅寸前からの復活は“出発点”

  • 歴史的迫害で地域的に絶滅 → 国際条約とEU法で保護 → ドイツでは 2000 年に繁殖復活2023/24 年に 209
  • EU は 2025 年に法改正し、保護を維持しつつ管理の柔軟性を拡大。
  • 次の課題は、科学と地域の知見を融合した“賢い共存”。
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