ケーブルグランドと圧着端子の「適合範囲」を正しく読む
なぜ「適合範囲」と「許容差」が重要なのか
制御盤・機械装置・インフラ設備の信頼性は、ケーブル本体だけでなく端末処理(ケーブルグランド+圧着端子)で大きく左右されます。水や粉塵の侵入、引張での抜け、振動による接触不良――こうしたトラブルの多くは「合っているはず」と思い込んだ部品の組合せが、実は適合範囲の端(または範囲外)だった、というケースで起こります。
用語整理 : 適合範囲とトレランス(許容差)の基本
適合範囲(Compatibility range)
メーカーが仕様として示す「この範囲なら性能を満たせる」という保証レンジです。代表例は次の通りです。
- ケーブルグランド : クランプ範囲(=対応ケーブル外径)、ねじ規格、使用温度、IP 等級など
- 圧着端子/フェルール : 対応導体断面積(mm²/AWG)、導体種別(単線/撚線/細撚線)、必要工具・圧着形状 など
トレランス(Tolerance / 許容差)
一方で、ケーブル外径や導体断面積には製造上のばらつき(許容差)があります。つまり現実には、
- ケーブル外径は「公称値」ぴったりではない
- 導体断面積も“実断面”が一定とは限らない
この「ばらつきを見込んで、適合範囲の“中央に寄せて選ぶ”」ことが、失敗を防ぐ最短ルートです。
ケーブルグランドの適合範囲 : チェックすべき 5 つのポイント
HELUKABEL のガイドでも、ケーブルグランドは盤・機器への固定と、防塵・防水・引張保護を担う重要部品であり、選定によりトラブル低減や信頼性向上が期待できると説明しています。(記事 : ケーブルグランドの選び方ガイド)
① クランプ範囲(対応ケーブル外径)
標準ストレートタイプでは、クランプ範囲(ケーブル外径)が細かく設定されており、外径に合わせてサイズを選定するのが基本です。
ここが“適合範囲”の中心です。
② 取付ねじ規格・取付穴(機器側との互換)
ねじ規格(メートルねじ等)や板厚、ロックナットの有無などで「入る/入らない」が決まります。これは適合範囲以前の物理互換です。
③ 材質(耐食・強度・衛生・薬品)
例として、上記記事ではポリアミド(樹脂)、真鍮(ニッケルメッキ)、ステンレス、PVDF などを用途別に整理しています。
④ IP 等級(防塵・防水)と環境条件
IP コードは IEC 60529 で定義される保護等級で、粉塵・水の侵入に対するレベルを示します。
また同ガイドでは、HELUKABEL のケーブルグランドは多くのシリーズで IP68/IP69K を満たす旨にも触れています。
⑤ EMC(シールド接地)が必要か
シールド付きケーブルを扱う場合、EMC 対応グランド(360°接触で接地)など、構造要件が変わります。
“トレランス込み”で選ぶ : ケーブルグランド選定の実務手順
ステップ 1 : ケーブル外径は「最小〜最大」で把握する
データシートや実測で、外径のばらつきを想定します(例:外径 = 〇〇mm ± △△mm)。
ステップ 2 : クランプ範囲の“端”を避け、中央を狙う
理想は下記の関係です。
- 外径最大値 ≤ グランドのクランプ最大
- 外径最小値 ≥ グランドのクランプ最小
これを満たしつつ、外径がクランプ範囲の中央付近に来るサイズを選ぶと、締付け量(シール量)の余裕が出ます。
ステップ 3 : 材質・シール・温度・洗浄条件を最終確認
食品・薬品・屋外などは、IPだけでなく材質要件が実質的な合否を決めます。
ステップ 4 : 施工品質(締付トルク・抜け確認)をルール化
適合範囲内でも、施工が甘いと性能が出ません。現場で再現できるよう、手順・工具・検査(引張/目視)をセットで標準化しましょう。
圧着端子(フェルール/ラグ)の適合範囲 : ここで“ズレ”が起こる
① 導体断面積(mm²)の“読み違い”が起きやすい
HELUKABEL の別記事では、JIS と欧州ケーブルで公称断面積の刻みが異なるため、安易な置換(例 : 3.5mm²の代わりに4mm²)をすると、端子圧着範囲がずれて危険になり得ると注意しています。(記事:
欧州ケーブルを日本で使う前に ― 公称断面積(スケア)の落とし穴
)
② 端子(またはフェルール)側にも規格・前提がある
フェルールの例では、DIN 46228-4 等に基づく製品があり、メーカーは対応断面積レンジを明確にしています。
さらに、DIN 46228-4 に関して「公称サイズの少なくとも 90% の導体断面を使う推奨」など、充填率の考え方も示されています。
③ 工具(ダイス)との組合せが“適合範囲”を完成させる
同じ端子でも、工具の圧着形状・ダイスが異なれば、出来上がり(圧着高さ・圧縮量)が変わります。つまり、端子だけ合っていても不十分で、
- 端子/フェルールの指定工具
- 指定圧着プロファイル
- 指定ストリップ長
まで揃えて初めて「適合」と言えます。
適合範囲は「レンジ」ではなく「保証」—だから“中央設計”が効く
ケーブルグランドは外径クランプ範囲と IP /材質/構造、圧着端子は断面積レンジと工具・施工条件。
この 2 つを、トレランス(ばらつき)まで含めて“中央に寄せて”設計・選定するだけで、現場トラブルは驚くほど減らせます。
HELUKABEL はケーブルだけでなくケーブルグランドを含む付属品も一体で提供し、用途に応じた選定・運用を支援しています。
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