二重スクリーン(ダブルシールド)ケーブル徹底解説
ノイズ対策と「二重スクリーン」の重要性
HELUKABEL GmbH は、ドイツ・Stuttgart 近郊 Hemmingen に本社を置く電線・ケーブルおよびケーブルアクセサリの国際的メーカー/サプライヤーで、1978 年の創業以来 45 年以上にわたり、産業機械・エネルギー・インフラなど幅広い分野にケーブルソリューションを提供しています。
本記事では、二重スクリーン(ダブルシールド)ケーブルとは何か、シングルスクリーンケーブルとの性能差、代表的な用途をわかりやすく解説します。
二重スクリーン(ダブルシールド)ケーブルとは?
構造 : 編組+箔で広い周波数帯をカバー
一般的に、スクリーン(シールド)ケーブルには代表的な 3 タイプがあります。
- 編組スクリーン(ブレイドシールド)
- 銅線を編み込んだスクリーン
- 柔軟性・機械的強度に優れ、一般的なノイズ対策に広く使用
- 箔スクリーン(フォイルシールド)
- アルミ箔などの薄い金属箔で、ケーブルをぐるりと覆う構造
- 高周波ノイズに効果的だが、柔軟性は編組よりやや劣る
- 二重スクリーン(ダブルシールド)
- 編組スクリーン+箔スクリーンの組み合わせ
- 低周波~高周波まで広い周波数帯で高いシールド効果を発揮
つまり二重スクリーンケーブルとは、「編組スクリーンで機械的強度と低~中周波のノイズ抑制」+「箔スクリーンで高周波ノイズを強力に遮蔽」を同時に実現する、高性能な EMC 対策ケーブルです。
シングルスクリーンとの違い:性能・コスト・取り回し
1. シールド性能(EMC 性能)
二重スクリーンケーブルの主なメリット
- 広帯域でのノイズ抑制 : 箔が高周波ノイズを、編組が低~中周波ノイズや外部電磁界を効果的に抑制
- カップリング抵抗の低減 : 電磁干渉の侵入・放射を低減しやすく、EMC 規格対応が求められる設備に適合しやすい
- システム全体の安定動作に貢献 : 周波数変換器(インバータ)とモーター間などで発生する高 dv/dt・高周波成分の影響を抑え、誤動作や周辺機器への干渉リスクを低減
HELUKABEL の周波数変換器用モーター接続ケーブル
TOPFLEX® シリーズには、
「二重スクリーン、EMC 推奨タイプ」と明記された製品が多数ラインアップされており、EMC 対策用途向けに設計されています。
一方、シングルスクリーン(編組のみ・箔のみ)は以下のようなケースで使用されます。
- ノイズレベルがそれほど高くない
- 近傍に特に高感度な信号ラインが無い
- コストやケーブル外径を最優先したい
2. 取り回し・柔軟性
二重スクリーン : シールド層が 2 層になるためケーブル外径がやや太くなる/若干、曲げ剛性が高くなる(固く感じる)
シングルスクリーン : 一般的に同じ導体断面積で比較すると外径が細く、柔軟性に優れる/配線スペースが限られた制御盤・小型機器内では扱いやすい
ただし HELUKABEL のモーター接続ケーブル TOPFLEX®-MOTOR-EMV 1/1 など、PUR シースと最適なスクリーン設計により柔軟性と EMC 性能のバランスを取った製品も存在します。
3. コスト・トータルバリュー
二重スクリーンは材料・構造が複雑な分、ケーブル単価はシングルスクリーンより高くなりがちです。しかし、ノイズトラブルに起因する 装置の停止・再調整・現地対応 のコスト/EMC 試験での不具合による 設計やり直しを考えると、「はじめから二重スクリーンを選定する」ほうがトータルコストが低くなるケースが多くあります。
二重スクリーンケーブルが活躍する代表的な用途
HELUKABEL の二重スクリーン(EMC 推奨タイプ)製品は、以下のような用途で多く採用されています。
1. 周波数変換器(インバータ)用モーター接続
- インバータ駆動モーター、ポンプ、ファン、コンプレッサなど
- 高いスイッチング周波数により発生する高周波ノイズを抑制
- 周囲のセンサー配線・制御ケーブルへの影響を低減
例:TOPFLEX®-EMV-UV-2YSLCYK-J / -2XSLCYK-J / -2XSLCHK-J シリーズ
「二重スクリーン」「EMC 推奨タイプ」「拡張通電容量」を特徴とする周波数変換器用モーター接続ケーブル。
2. サーボ/ドライブケーブル
- サーボモーター、ロボット、搬送装置など、高速応答が求められる駆動系
- エンコーダケーブルやフィードバックケーブルと近接配線されることが多い。
→ 二重スクリーン構造により、モーター側からのノイズ放射を抑え、位置決め精度や制御安定性に貢献
3. ノイズレベルが高い工場・プラント設備
- 大型インバータ・ソフトスタータ・溶接機・電源装置などが集約された盤・ライン
- 医療機器・試験装置・測定機器など、高い電磁環境性能が求められるエリア
- 産業用イーサネットやフィールドバス配線が近傍を通る場合
4. 屋外・再生可能エネルギー・インフラ
- 風力発電設備・太陽光発電所のインバータ周り
- 屋外クレーン、港湾設備、ポンプステーションなど
- HELUKABEL の TOPFLEX®-EMV-UV シリーズのように、耐油性・耐紫外線性・屋外用途向け/二重スクリーン構造を兼ね備えたケーブルは、過酷な環境での長期運用に適しています。
HELUKABEL の二重スクリーンケーブルを探す方法
HELUKABEL の製品検索ページでは、製品詳細ページに「二重スクリーン」「EMC 推奨タイプ」などの特性が明記されたモーター接続ケーブルや制御ケーブルを確認できます。
製品検索での探し方
- HELUKABEL Japan 公式サイト にアクセス
- 右上上部タブ 「製品検索ツール」、または左上上部「プロダクト・ソリューションズ」タブの「オンラインショップ・製品検索」 を開く
- 検索バーまたはフィルタ条件のキーワード欄に「二重スクリーン」と入力して検索
これにより、特性欄に「二重スクリーン」と表示されるケーブル(例:TOPFLEX®-EMV-UV-2YSLCYK-J、TOPFLEX®-MOTOR-EMV 1/1 など)が一覧表示されます。
二重スクリーンを含むスクリーン構造の違いや、EMC 対策の考え方をより詳細に知りたい方は、HELUKABEL Japan ニュースルーム記事 : クロストークと EMC の違いとは?効果的な対策とスクリーンケーブルの選び方 もあわせてご覧ください。クロストークと EMC の基礎、編組・箔・二重スクリーンの違い、ケーブル選定のポイントを分かりやすく解説しています。
EMC が重要な現場では「二重スクリーン」を第一候補に
- 二重スクリーンケーブルは、編組+箔の二層構造により広い周波数帯域で優れたノイズ抑制性能を発揮し、EMC 要求の厳しいインバータ駆動・サーボ・プラント設備に最適
- シングルスクリーンは柔軟でコストメリットもありますが、ノイズレベルが高い環境では、二重スクリーンを選定することでトラブル削減・試験合格・安定稼働という形で、結果的にコスト削減につながります。
HELUKABEL は、ドイツ本社の生産拠点と世界各国の拠点ネットワークを通じて、産業用からインフラ用途まで幅広い二重スクリーンケーブルをラインアップしています。
「どのスクリーン構造を選べばよいか分からない」場合は、お客様の設備構成・周波数変換器仕様・配線条件をお伝えいただければ、HELUKABEL Japan が最適なケーブル選定をサポートいたします。