耐熱ケーブルガイド : 規格、データシート、HELUKABEL の高温対応シリーズ
耐熱ケーブルとは?
耐熱ケーブル(耐熱電線)は、高温環境下でも長期にわたり安全かつ安定して通電・信号伝送できるよう、導体・絶縁体・シース(外被)・編組(シールド)などを耐熱設計したケーブルの総称です。材料にはシリコーンゴム、フッ素樹脂(PTFE/FEP)、ガラスシルク、XLPE(架橋PE)などが用いられ、連続使用温度域は材質によって大きく異なります。たとえば、シリコーンはおおむね -60~+180°C、FEP は -100~+205°C、PTFE は -190~+260°C、ガラスシルクは最大約 400 ~ 600 °Cクラスまで対応する設計例があります(シリーズによる)。
まず押さえるべき「規格」の考え方
用途や設置国により適用規格は変わります。耐熱だけでなく「安全(難燃・低腐食・低煙)」や「承認」を総合的に確認しましょう。
- IEC / 国際規格(例)
- IEC 60754-2 : 燃焼時の発生ガスの酸性度(ハロゲンフリー材料の安全性評価に有用)。火災時の腐食性・人体影響低減に関わる重要指標。
- IEC 61034 : 燃焼時の発煙密度(低煙性の確認)。
- IEC 60332(難燃): 難燃性評価(耐熱=高温連続使用、難燃=燃え広がり抑制で別概念。両輪で確認)。
- IEC 60228 : 導体クラス・直流抵抗の規定(高温時の抵抗上昇・許容電流評価に関与)。
- 北米規格(UL/CSA)
- UL 758(AWMスタイル)/ UL 1581 : 機器配線用ワイヤの温度・耐圧・難燃要求。UL 表示の温度等級(例 : 105°C、125°C、150°C…)を必ず確認。
ポイント :「耐熱=温度等級」「難燃=火災時のふるまい」「低腐食・低煙=人・設備保護」。用途に合わせて複数規格を“積み上げ”で満たすケーブルを選びましょう。
データシートで必ず見るべきチェックリスト
A. 温度定格(連続・短絡・可動/固定)
- 連続使用温度(例 : +180°C)、短時間上昇、低温側限界(例 : -60°C)。
- 可動用途(ドラッグチェーン等)か固定配線かで許容範囲が異なる。
B. 材料と構造
- 絶縁・シース材(シリコーン、FEP、PTFE、XLPE、ガラスシルク等)と、その耐熱・耐薬品・耐候性。
- 導体の材質(スズめっき銅/ニッケルめっき銅など)。高温・腐食環境ではニッケルめっき銅が有利なケースも。
C. 電気特性
- 定格電圧、絶縁抵抗、導体抵抗(IEC 60228 クラス)、耐電圧。
D. 安全・環境特性
- 難燃性(IEC 60332 等)、ハロゲンフリーかつIEC 60754-2準拠、低煙性(IEC 61034)。
E. 機械・設置条件
- 最小曲げ半径(固定/可動)、外径、質量、耐摩耗性、耐振動。
- シールド(EMC 対策)有無:周囲ノイズや高温機器近傍では編組シールドが有効。
F. 認証・適合
- UL/CSA、CE、EAC 等のマーク・ファイル番号。輸出機器やグローバル工場では重要。
G. 使用事例・適用分野
- 鉄鋼・ガラス・セメント・鋳造、照明・ヒーティング機器、航空・船舶など高温環境の配線実績を確認。
用途別「材料」クイックガイド
- シリコーン : -60~+180°C、柔軟性と耐候性のバランスが良く、可動部位にも適性。
- FEP : -100~+205°C、耐薬品・耐油に強い。薄肉化もしやすい。
- PTFE : -190~+260°C クラス、最高レベルの耐熱・耐薬品・電気特性。
- ガラスシルク : 400~600°C クラスの極限環境向け(設計・構造に依存)。
- XLPE(架橋PE): 電気特性・耐熱性とコストのバランスが良い。
HELUKABEL の耐熱対応シリーズ(一例)
HELUKABEL は、幅広い温度帯・規格適合の耐熱ケーブルを提供しています。
- SiF(単芯シリコーン): 鉄鋼・鋳造・ガラス・セメント工場、航空・船舶など高温設備の配線に。-60~+180°C クラス。
- SiHF-C-Si(多芯+シールド・シリコーン): 照明・ヒーティング機器などでノイズ対策が必要な制御線に最適。EMC 観点でアーシング接続を推奨。
- FEP / PTFE単芯 : -100~+205°C(FEP)、-190~+260°C(PTFE)クラスの高機能ワイヤ。化学耐性・電気特性に優れる。
- HELUTHERM® シリーズ : 最大約 -60 ~400°C レンジの高温雰囲気、高温・腐食環境向けの耐熱設計(ニッケルめっき銅の選択肢など)。
こちらの記事 では材料解説や安全規格の解説記事も掲載しています。素材・規格の“意味”から理解できるので、選定精度の向上に役立ちます。
選定の実務ヒント(TCO 最適化のコツ)
- 連続温度 × 寿命 × 停止コストで材料を選ぶ(例 : 高温連続運転+腐食環境=ニッケルめっき銅+FEP/シリコーン等)。
- “耐熱”に加え“火災安全(難燃・低腐食・低煙)”を重視(公共・トンネル・建屋)。IEC 60754-2 や低煙性を確認。
- EMC 対策は構造で決まる : 高温機器や周辺インバータが強い場合は編組シールド品を。
- 承認は調達の鍵 : UL/CSA・EAC など、設備の輸出・将来拡張を見据えて選ぶ。
まずは HELUKABEL にご相談ください
HELUKABEL はドイツ本社を中心に世界 76 拠点で製造・物流・技術支援を展開し、 33,000 超えの在庫で日本のお客様にも迅速に供給します。用途・規格・寿命・コストのトータル最適化をご提案します。