PROFINET とは?産業用イーサネットと一般イーサネットの違いを解説
PROFINET とは?
PROFINET(プロフィネット)は、工場やプラントの自動化分野で使われる産業用イーサネット通信規格です。Ethernet(イーサネット)の物理層・インフラをベースにしながら、リアルタイム性・信頼性・診断性を強化し、PLC、I/O モジュール、センサー、ドライブなどのフィールド機器を統合的に接続できるように設計されています。
HELUKABEL グループは、ドイツ・ヘミンゲンに本社を置くケーブル・電線・ケーブル付属品の国際的メーカーであり、産業用イーサネットやバスケーブル、PROFINET 対応ケーブルなども幅広く提供しています。
PROFINET は、国際的な自動化機器メーカーが採用しているオープンな規格で、既存の Ethernet インフラと親和性が高いことも大きな特徴です。
PROFINET が使われる理由 : 工場に求められる「リアルタイム性」と「見える化」
一般的なオフィス LAN と異なり、工場のネットワークでは次のような要件が求められます。
- ミリ秒レベルのリアルタイム制御
ロボットの同期制御、コンベヤラインの位置決め制御などでは、通信の遅れやばらつき(ジッタ)が生産品質に直結します。 - 高い信頼性と耐ノイズ性
インバータ、モーター、溶接機などノイズ源が多い現場環境でも安定して通信できること。 - トラブル時の迅速な診断(ダイアグノスティクス)
どの区間で通信が途絶えたか、どの機器に異常があるかをすぐに特定できること。
PROFINET は、こうしたニーズに応えるために、
- 「標準 TCP/IP 通信」だけでなく
- 制御用の「リアルタイム通信(RT)」
- さらに高精度な「アイソクロナスリアルタイム(IRT)」
といった通信クラスを備え、生産設備全体のネットワーク構築を可能にします。
PROFINET と一般イーサネットの違い
1. 用途の違い : オフィス vs. 生産現場
一般イーサネット(オフィスLAN)
- PC、サーバ、プリンタ、NAS などを接続
- インターネットやファイル共有など「情報系」の通信が中心
- 通信のタイミングが多少ずれても、ほとんど問題にならない
PROFINET(産業用イーサネット)
- PLC、I/O、センサー、ドライブ、ロボットなど「フィールド機器」を接続
- 生産ラインやマシン制御など「制御系」の通信が中心
- タイミングのズレが、製品不良や設備停止につながるため、リアルタイム制御が必須
2. 通信方式・プロトコルの違い
一般イーサネット :
- TCP/IP、UDP などの汎用プロトコルを使用
- ベストエフォート型(速く届けるよう努力するが、時間保証はしない)
PROFINET :
- これらに加えて、制御用のリアルタイムプロトコルを追加
- 通信サイクルを決めて制御データを優先的に送ることで、リアルタイム性を確保
3. ケーブルとハードウェアの違い
オフィス用 Ethernet ケーブル :
- 一般的な UTP ケーブル(シールドなし)が多く、ノイズにはそれほど強くない
- 固定配線が中心で、曲げ・屈曲回数の要求は比較的ゆるい
PROFINET / 産業用イーサネット用ケーブル :
- シールド付きツイストペアケーブル(STP/FTP)など、外来ノイズに強い構造
記事→ ツイストペアケーブルとは?特長・用途・選定ポイントを詳しく解説 - 耐油・耐熱・耐摩耗・難燃といった、工場環境に合わせたジャケット材質
- ケーブルキャリアやロボットアームに使用できる、高い可とう性・屈曲寿命を持つ種類もラインアップ
- 産業用M12 コネクタ、産業グレードRJ45 など、堅牢なコネクタを組み合わせるケースが多い
4. 診断機能とメンテナンス性
PROFINET では、ネットワークに接続された機器の状態やエラー情報をまとめて監視することができ、
- ケーブル断線
- 接触不良
- 機器故障
などの発生箇所を素早く特定し、ダウンタイムを短縮できます。これは、一般的なオフィスLANよりも「見える化」機能が強化された産業用ネットワークと言えます。
PROFINET が活躍するアプリケーション例
HELPKABEL のお客様事例では、食品工場のベーカリーラインにおいても、制御・サーボケーブルと並んで PROFINET ケーブルが採用されています。生産ライン全体で数百〜数千メートル規模のケーブルが使用されるケースもあり、信頼性の高いデータ通信が生産性と品質を支える重要な要素となっています。
代表的な用途 :
- 自動車・自動車部品工場のアッセンブリライン
- 食品・飲料・ベーカリーなどの包装・充填ライン
- 物流センターやコンベヤ・ソーター設備
- 半導体・電子部品の組立・検査装置
- 産業用ロボットシステム、AGV/AMR など
PROFINETネットワーク設計のポイント(ケーブル観点)
PROFINET を導入する際、ケーブル選定はネットワークの安定性に直結します。HELUKABEL では、産業用イーサネット/バスケーブルの選定ポイントを解説した日本語記事も公開しています。
特に注意したいポイントは次の通りです。
1. 伝送カテゴリ・規格の確認
- 100 Mbit/s(Fast Ethernet)か、1 Gbit/s 以上か
- ケーブルカテゴリー(Cat.5e、Cat.6、Cat.7 等)
2. 設置環境(固定か、可動か)
- 盤内固定配線か、ドラッグチェーン・ロボット用かで構造が大きく異なります。
- 最小曲げ半径・屈曲回数の仕様を必ず確認します。
3. ノイズ環境とシールド構造
- インバータ・モーター周辺では、編組シールドや二重シールド構造が有効です。
4. コネクタ形状・保護等級
- RJ45 か M12 か
- ストレート/アングル形状
- IP20 / IP65 / IP67 など防塵・防水性能
HELUKABEL が提供する PROFINET ケーブル&ソリューション
HELUKABEL グループは、
- 産業用イーサネットケーブル(HELUKAT シリーズ など)
- PROFINET 対応ケーブル
- 産業用コネクタやアクセサリ
- PROFINET 用電源ケーブル(24V POWER + ピンクの機能アース付き など)
といった豊富なラインアップを通じて、お客様のアプリケーションに最適なソリューションを提供しています。
日本のお客様向けには、helukabel.jp を通じて、 産業用イーサネット/バスケーブルに関する技術記事 や用途別のケーブル紹介も順次公開されており、設計段階から配線のお困りごとをサポートしています。
PROFINET と次世代イーサネット技術
近年、工場内ネットワークでは Single Pair Ethernet(SPE) など、新しいイーサネット技術も注目されています。HELUKABEL でも Single Pair Ethernet 用ケーブルに関する情報 を公開しており、従来の PROFINET や産業用イーサネットと組み合わせることで、工場全体の通信インフラを最適化できます。
- PROFINET は、Ethernet をベースにした産業用イーサネット規格であり、リアルタイム性・信頼性・診断性に優れています。
- 一般イーサネットとの大きな違いは、「用途(情報系 vs 制御系)」と「リアルタイム性・環境耐性・ケーブル仕様」です。
- 適切な PROFINET ケーブルとコネクタを選定することで、生産ラインの安定稼働・品質向上・ダウンタイム削減に大きく貢献できます。
- HELUKABEL は、ドイツ本社で培ったケーブル技術と豊富な産業用イーサネット製品群により、日本のお客様の工場DX・自動化プロジェクトをサポートします。